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女性活躍促進~企業経営以外の視点から~

提供元:三井住友DSアセットマネジメント(責任投資推進室 穗坂 悠)

企業経営におけるDE&Iとりわけ女性活躍の必要性について、社会全体で意見の集約化が進んできました。どちらかといえば人手不足対応という側面で捉えられていた時期もありましたが、社会全体が不確実な時代に、意思決定の場において多様性を持つことで最適な経営判断ができるといった考え方に進化してきました。

当社でも議決権行使においてダイバーシティに関する判断基準の採用や、30% Club Japan Investor Groupに加入し、取締役会等に占める女性割合向上のエンゲージメントを実施しています。筆者も同イニシアティブにおいて活動しておりますが、今回は、育児等に携わる最中の立場として、企業経営以外の観点から二つのテーマについて触れたいと思います。

家事と育児・介護の仕事量

一つ目のテーマは、家事、すなわち家の仕事についてです。女性が企業で活躍する代わりに専業主夫になるという考え方もありますが、基本的には共働きが多いかと思います。

家の仕事の中で、宅配や冷凍食品を利用できる炊事と比べて、人手がどうしても必要となるのが育児や介護の分野です。休暇制度の充実や保育園・介護施設の利用などがありますが、それらはあくまで時間の使い方の変化(企業→家、保護者→労働者)であり、効率化とは言いづらいです。

例えば、乳幼児に音楽CD付きの歌絵本を買った際に、音データを紐づけたタッチペン対応のシールを絵本に貼り、子どもが自ら音楽を再生できるようにすることで、大人がCDを再生する手間を省くといった話を聞きました。これこそ真の効率化と呼べるでしょう。(このような業務効率化能力を持つ方は、企業でも重宝されると思いますが。)

特にエッセンシャルワーカーと呼ばれる方々が不足し、人件費の高騰が予想される中で、AIなどを活用したこのような効率化施策は、ビジネス機会につながるのではないでしょうか。


悪阻(つわり)研究の重要性と最新の進展

二つ目のテーマは、悪阻(つわり)の研究です。少子化が課題とされる中で、出産に向けて大きな障壁となっているにも関わらず、この分野の研究は進んでいません。

その背景として、悪阻の患者が限定的(女性かつ一定の年齢層のみ)であることや、胎児への影響を考慮し我慢するしかないという風潮が考えられます。また、この分野を専門とする医師も少ないのではないでしょうか。(その点では女性の医師が増えることも重要です。)対処法を検索しても、食事に関する一般的な内容に留まっているのが現状です。

そういった中で、2023年12月に、国際的な総合科学ジャーナルであるNatureに、特定ホルモンの値が妊娠中の悪阻に関連している可能性が高いという論文が発表されました。 GDF15(Growth Differentiation Factor 15)と呼ばれるホルモン値の上昇が悪阻に関係しており、大部分が胎児胎盤ユニット由来であること、また非妊娠の状態でGDF15の濃度が低い人ほど発症リスクが高く、恒常的に濃度が高い人は悪阻が起こりにくいことが示されました。

治療や予防の研究はまだまだこれからという状況ですが、今後の進展に期待が寄せられます。



まとめ

企業経営の視点以外で、女性の活躍を促進するための鍵となる二つのテーマを取り上げました。
視点は異なりますが、これらの課題解決方法を見出すことが企業のビジネスチャンスに繋がります。また、インパクト投資の分野でもこのような視点が求められています。

社会的課題をトップダウンで見ていくことも重要ですが、細かなテーマをボトムアップで積み上げていくことの重要性も改めて感じました。

なお、本レターの作成には家族の協力を大いに仰ぎました。この場を借りて感謝いたします。

<参考資料>
●Nature HP
 GDF15 linked to maternal risk of nausea and vomiting during pregnancy | Nature
● はなさく生命 I’m OK? MAGAZINE
 つわりの原因は解明された?最新の研究内容と症状の対策を解説|I'm OK magazine (life8739.co.jp)

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