企業の大きな変化の小さな兆しを見極めていく、その考え方の原点とは ファンドマネージャー 古賀 直樹
アクティブに挑戦し続ける当社の社員を紹介するマガジン「Be Active.」。
第二回は、企業価値の向上や市場評価の見直しが見込める“いい企業”をしっかり選んで投資する「アクティブ元年・日本株ファンド」の運用に携わる古賀FMをご紹介します。
高2の夏、野手から投手へのポジション変更
小さい頃から野球が大好きで、学生時代の大部分は野球をして過ごしたと言っても過言ではないのですが、ずっと野手でした。投手は少年野球、中学と各1試合ずつ投げただけでしたが、チーム事情もあって、高校2年の夏に先生方からやってみないかと。左投げで、比較的きれいなフォームで投げられてケガをしにくそうなことから白羽の矢が立ったのだと思います。
ただ、その時は考えました。1年後の最後の夏にマウンドに立つことなど、その時点でまったく想像できなかったものですから。大学卒業後にプロ野球選手になった同級生もいるくらいのレベルでしたし、ポジション変更をすることでベンチにも入れなくなるかもしれないじゃないですか。やったことがないのに、1年弱で一定のレベルにならないといけないので不安でしたね。それに、野手と投手では練習内容が違っていて、体を鍛えるメニューが多くなる分、投げて、打って、守っての時間が減るんです。野球好きにとっては、毎日の楽しみが減るなぁと寂しくもありました。
でも、結果的にはやってよかったです。1年間、これまでの人生で最も1つのこと、それも大好きな野球に没頭した時間を過ごせました。ピッチャーらしい投球になったとチームに認められたのは最後の夏の大会の直前でした。この挑戦で野球を深く知ることができましたし、最後の夏は背番号1をつけて、マウンドにも立てました。3つ勝って、4回戦でシード校に逆転サヨナラ負けだったので、悔しさとチームメイトへの申し訳なさは今も抱えたままですけど、最も大切な、輝かしい思い出の1つです。
内定辞退から偶然出会ったファンドマネージャーの仕事
就活の時、決まりかけていた会社に違和感を覚え、内定辞退を申し出ました。大学の友達は皆、内定をもらって就職活動を終えている中、また1から就職活動を始めることになり、まさに崖っぷち状態。その時に、出会ったリクルーターの方が、ファンドマネージャーでした。就活を始めた当初は金融には全く興味がなかったのですが、状況が状況ですし、家にいてもしょうがないので、話だけでも聞いてみるかと出向きました。そんな私に、国内株式運用という魅力的な仕事があること、ファンドマネージャーという仕事に誇りを持って取り組んでいることを情熱的に話していただき、「この仕事をやってみたい、自分も究めてみたい」と思いました。
その後、何の専門知識もないのに「ファンドマネージャーになりたい、やらせてくれる会社に入りたい」と自分の希望を全面的に主張する就職活動をして、それを面白がってくれた会社に入社しました。それから、会社は変わりつつも、国内株式運用の仕事一筋で、今日まで来ています。
役割に集中することで苦手を乗り越える
そうやって熱意をもって就いたファンドマネージャーの仕事ですが、実は僕自身はかなりの「人見知り」です。仕事柄、多くの企業取材を日々しているので、それでは困るのですが、なんとかファンドマネージャーという役割に集中することで乗り越えている感じです。最初の頃は、「雑談を交えたほうがいいのかな?」と思っていましたが、段々と「企業の方も自社の話をしに来てくれているわけだし、その点に集中しよう」と役割を意識したコミュニケーションをとるようになりました。対面で1-2回、しっかりとお話が聴ければ、その次からはまったく大丈夫なので、年数を重ねてきたこともプラスになっていますね。
そんな私ですが、企業取材はなるべく対面でやるようにしています。言葉だけでは測れない熱量を感じたりできますし、取材後、エレベーターまでの間の雑談にも多くのヒントが含まれていたりするからです。取材後であれば、初回であっても雑談できるときもありますが、こうして改めて振り返ってみると、何も話せず、無言でエレベーターに向かっていることも多いなぁと思います。
ちなみに、昔は企業の情報開示が今ほど積極的に行われておらず、企業にアポイントを取っても正確に会社の情報を把握している担当者が初回から出てきてくれないことも多々ありました。特に中部地方の企業を担当した際、地域柄なのか、謙遜される方が多く自分から積極的にその企業の良さを話してくれないこともあったので、そういった場面では苦労しましたね。
「未来に向かっていく力」「社長が自らの口でどういったビジョンを伝えているか」を大事に組入の最終決定を行い、私自身も自信をもって組み入れた理由を語れる企業を選択するようにしています。今は投資対象ではなくとも、未来に向かっている企業については継続してお話しを聞くようにしています。
未来を見据えて動き出している企業が日本には多くある
真面目に真摯に取り組んでいる企業は昔から日本には非常に多くあります。ただ一方で、未来に対して“具体的に変化”していくことを“躊躇”していた企業が多くあったことも事実です。更に、これから人口減少が見込まれる中で、日本経済が右肩上がりで成長することはイメージしにくいですよね。でも、多様性が求められる今の時代だからこそ企業にとって大きなチャンスだ思っています。みんなが同じ方向を目指さなくてよく、それぞれの価値観で、世界や私たちの生活を良くしていきたいと考えて、行動している企業にとってはそこに大きなビジネスチャンスが眠っていると思います。多くの企業と対話をしてきて「コロナが理由かどうかは分かりませんが、最近変わってきたな」と実感するのは、“こうなりたい、こうしていく”という具体的な未来を語れる企業が日本にも増えてきていることです。社会課題に対し、その解決、解消のために、私たちの生活をより良くするような変化を起こそうと真摯に取り組んでいる企業が多くあるということです。若い人たちが新しい価値観や発想で立ち上がっていることもあれば、これまでの日本を築き、支えてきた企業が、さらなる未来を見据えて動き出していることもあります。私が投資の最終決定を行う際に大事にしているのは、「未来を良くする力があるか」「社長が自らの口でどういったビジョンを伝えているか」という点です。私自身も投資した理由を自信を持って語れる企業を選択するようにしています。まだ未来に対して懸念や不安の方が大きい世の中かもしれませんが、未来はきっと良くなる。その大きな変化の小さな兆しを見極めていくのが、これからの私の仕事だと思うと、ワクワクします。
未来が過去を決める
最近気に入っているのは「未来が過去を決める」という言葉です。
ファンドを立ち上げて、しっかり運用して軌道に乗せていくというのは10年単位の仕事だと思っているので、未来を見据えて今着実に成果を積み上げることが、過去の評価に繋がっていくと考えて日々仕事をしています。過去の延長で未来が決まるのではなく、これからの生き方によって、過去の価値が新しく塗り変わっていくという考え方は、今の自分を前向きに後押ししてくれますよね。
知らないことを知れるのが現地へ行く魅力
息子が小学生で、まだ一緒に出かけてくれるので、休みの日は家族で日本国内をあちこち回ったりしています。例えば古墳や寺社仏閣、お城など、歴史の教科書に出てくような史跡や、博物館などによく行きますね。必ずしも子供向けではないのですが、実際に訪れておくことは良い勉強になると思いますし、それなりに楽しんでくれていると思います。やはり、お城にはとても興味を持ってくれているようです。私自身も現地のガイドさんとお話しする中で、自分の知っている歴史と違うエピソードを伺うこともあり、そういう現場に行くことで得られる発見は面白いと感じます。
目の前に現れたことに挑戦していきたい
何かこれ、というものが見つかっているわけではないですが、新しいことへの挑戦は必要だなと感じています。子どもを通して、未経験のことになんでもチャレンジしていく姿はいいなと思う瞬間はありますね。世の中の変化が早く、新しいものは次々と出ているように思いますが、来年50歳という年齢にもなると、初めての経験、体験というのが減ってきていて、意識をして、自らが一歩踏み出さないと手に入らないものになっているなと実感します。まずは、高い意識とささやかな勇気を持つことからですね。
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