ファンドマネージャーが行く!Part8 ~FM 視点の現地調査レポート~
今回の「ファンドマネージャーが行く!」では、「株式会社ニチレイ」での工場見学の様子をレポートします。
日本における冷凍食品のフロンティアカンパニーとして、研究開発・調達・生産・販売・物流の能力をフルに活用し、お客様の役に立つ価値ある商品とサービスを提供し続けるニチレイ。
今回はIR担当の方に生産拠点の1つである(株)ニチレイフーズ船橋第二工場を案内していただきました。
製品の生産工程や最新システムについて説明していただくとともに、現場の方のお話を聞くことが出来る貴重な機会になりました。
今回は「三井住友DS日本バリュー株ファンド(愛称:黒潮)」を運用する部奈ファンドマネージャーによる取材の様子をお届けします。
早速当日の取材の様子をレポート
工場の説明・見学
まずは工場の説明・見学からスタート!
船橋第二工場では主にハンバーグ、フライの冷凍食品を中心に生産を行っており、
今回は冷凍ハンバーグの製造工程を見学しました。
冷凍ハンバーグの場合、以下のような工程で製造されます。
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① 原料の加工、混ぜ合わせ
独自開発したシステム「PAS(Production Assistance System) 」により、原料から製品までの情報管理やトレーサビリティを行なっており、正しい状態で生産されているかをリアルタイムで管理しています。原料加工工程においても、原料の重さを計って袋に分けた後、袋ごとにバーコードを付与、システムへの登録を行うことで、混ぜ合わせの過程で誤った材料の使用や配合ミスがないよう管理しています。
② 成型
加熱後の原料の収縮なども計算し、適正な形で打ち出します。
③ 焼き・蒸し工程
プロの調理技術を再現しており、はじめに両面の表面を一気に焼き上げておいしさの元となる肉汁を中に閉じ込め、その後、ふっくらと仕上げるため、蒸し工程でじっくり熱を加えていきます。
【焼き工程(ダブルベルトグリル製法)】
【蒸し工程】
④ 急速凍結
焼きあがった直後の熱々のハンバーグを、家庭の冷凍庫(-18℃)では再現できない低温で急速凍結することで、おいしさを閉じ込めます。
⑤ トレー・パッケージ詰め作業
ロボットを用いてプラスチックトレーにハンバーグを詰める工程。
形や大きさが微妙に異なるハンバーグをロボットに掴ませる技術の開発に苦戦したとのことでした。
⑥ 衛生検査
⑦ 出荷
衛生検査を経て、工場から保管冷蔵倉庫経由で商品が出荷されます。
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工場全体では約200名の従業員がおり、うち50名弱が各工程・部門の管理者とのこと。食品は特性上一つ一つ形状が異なり、定形のものよりもロボット技術導入の難易度が高い中で、これまでも自動化による省力・省人化を進めてきましたが、じっくり手間ひまをかけておいしさを引き出すための作業や、賞味期限の目検による最終確認など、商品へのこだわりや安全安心に関わる工程では人手で作業を行っているそうです。自動化した方が良い部分と人手で作業した方が良い部分を見極めながら、さらなる自動化に向けて日々改善を積み重ねているとのことです。
現場の方を交えた企業様とのディスカッション
見学が終わり会議室へ戻ると何やらおいしそうな匂いが…!
なんと、先ほど見学した製造ラインで作られる冷凍ハンバーグをはじめとした、ニチレイの冷凍商品をご用意いただきました!実際の製造過程を知ったうえで試食するとより一層おいしく感じられました。
ディスカッションでは、AIを活用した生産計画自動立案システムの効果が話題の中心に。
「熟練者に蓄積されたノウハウ」と「工場の状況」をデータ入力することで、生産計画の立案にかかる業務時間が1/10に短縮し、担当者の負担が軽減されたそう。その結果、作業の属人化が解消されたことで従業員のキャリアアップにつながり、また、人員配置の自由度が高まったことで従業員の満足度向上にも寄与しているようです。
ニチレイフーズでは<生産計画→要員計画→調達→生産→実績管理>までの幅広いシステムを内製主体で構築しており、自社の製品特性を良く知るシステム開発担当部門が自社内に存在することが大きな強みになっています。
新規工場では新しいシステムや機械の導入が比較的行いやすいものの、既存工場だと現在使用しているシステムや機械からのリプレイスの負担もあり、今後は既存工場の自働化・デジタル化が課題とのことで、船橋第二工場をモデル工場として積極的に取り組んでいきたいとおっしゃっていました。
今回の工場見学を通じて、以下2つのことを感じました。
①冷凍食品の進化はすごい!
冷凍技術の進化を通じて、調理のクオリティをあげ、「いかにおいしいものを凍らせるか」がポイントになっている、という点に改めて感心しました。
手作りの調理食品と遜色がない、もしくはそれ以上のクオリティである同社の冷凍食品のおいしさの源泉なるものを知り、同社、同社製品の魅力を再認識しました。
②(当たり前かもしれませんが)メーカーは製品が大事!
製品を製造し販売することを主な生業とするメーカーにとって、改めて製品が大事だと感じました。製品クオリティをあげるために、従業員の方々の弛まぬ努力があり、その努力が製品のクオリティに反映され、消費者に届き、売り上げにつながる、そのサイクルの根幹となる製造現場の視察を通じて、メーカーにとっての製品の大事さを改めて感じました。
部奈ファンドマネージャーはこうみた!
今回の見学のポイントは自動化とデジタル・AI活用です。
これまで食品の工場は非常に多くの人が働いていましたが、近年急速に自動化・省人化が進んできていると考えているからです。
自動化については、例えば冷凍ハンバーグのラインに関しては概ね完了しており、同社工場での自動化の進捗を自分の目で確かめることができました。そして最終工程に関しても、今後は自動化されていくのではないかといった感触を持つことができました。
デジタル・AI活用に関しては、実際に同社はAIを早期から導入しています。
船橋第二工場では、現時点では主に工場の要員計画の策定において用いられているようですが、将来的にはより多くのことを任せられるという印象を持ち、AI活用が工場だけでなく、会社全体の効率性改善につながるのではないかと思えました。また、同社に限らず、AIを早くから活用できている企業のポテンシャルは大きいように感じました。(部奈)
今回はファンドマネージャーの取材に同行する形で、ニチレイの工場見学、現場の方を交えたディスカッション風景の様子をお届けしました。取材をさせて頂いた企業の皆さまにおかれましては、この場を借りて感謝申し上げます。それでは今回の「ファンドマネージャーが行く!」は以上とさせていただきます。次回のシリーズもぜひご期待下さい。
記事内に登場した部奈ファンドマネージャーが運用するファンドはこちらご覧ください。