ファンドマネージャーが行 く Part11 (株式会社アマダ編)~FM 視点の現地調査レポート~
ファンドマネージャーの現地調査に密着
第11回「ファンドマネージャーが行く!」では、ファンドマネージャー(以下、FM)に同行する形で「株式会社アマダ(以下、アマダ)」の企業取材の様子をレポートします。
アマダは金属加工機械の世界大手であり、特に板金加工機械の製造に力を入れています。
同社は終戦後、創業者の天田勇さんが軍需工場に焼け残った旋盤を用いて、個人経営の小さな機械修理工場を開設した1946年創業の伝統ある企業です。
今回の取材のポイント
・熟練者でなくとも簡単、安全に操作ができる機械づくり
・「V-factory」と呼ばれるIoTを用いた先進的な取り組み
さっそく取材開始!
今回は2023年2月にオープンし、神奈川県・伊勢原本社に併設されている「アマダ・グローバルイノベーションセンター」を取材。同社の主力商品である板金加工マシン等の技術・サービスの説明を受け、デモンストレーションを見学しました。
「誰でも簡単に扱いやすい機械を」
まずはアマダのIR担当の方より、経営理念や事業計画について説明いただきました。
アマダの主力事業は板金加工機械であり、売上全体の7〜8割を占めているそうです。
そもそも板金加工とは金属の板(板金)に切断・曲げ・溶接などを行い、製品に加工する技術のことです。
この技術は私たちの身の回りの様々なところで応用されています。
【板金加工を用いた製品例】
サッシ、ドア、エレベーターなど建物内の金属部品
コンビニの棚、自販機
鋼材・建設分野(鉄骨・建設金属など)...etc
特に印象的だったのは、「誰でも簡単に扱いやすい機械を」という言葉です。
近年、製造業は少子高齢化に伴い人手不足が深刻化しています。
こうした状況状況の中、同社は熟練者でなくともより簡単にモノづくりができる製品を作ることを目標に製品開発を続けているそうです。
板金加工作品の展示ルームへ
この展示ルームでは同社が主催する優秀板金製品技能フェアの優秀作品が並べられていました。
本当に板金で作ったの?と目を疑うような作品もあり、板金の可能性を感じられる展示でした。
「これいったいどう作ってるんですか?!」
ファンドマネージャー一行も緻密な加工が施された作品にくぎ付けでした。
製品のデモンストレーションを 体感 できる 「 Innovation SITE」へ
「広い!」
このエリアに入るや否や、ファンドマネージャー一行は、口をそろえてその大きさに驚愕していました。
並べられているのは同社の主力商品です。
このInnovation SITEでは、同社の製品のデモンストレーションを見学しました。
レーザによる「金属板の切断・穴あけ加工」マシンの説明・デモンストレーション
レーザ加工機のマシンのあまりの速さに一同興味津々です。
金属板の曲げ加工を行うベンディングマシンの説明・デモンストレーション
続いて、金属板の曲げ加工を行う機械を見学。
金属板のセットや加工は作業者が行いますが、板を曲げる金型の配置や加工順序は事前に設定したプログラムに従い自動化されています。金属板をセットする位置や加工手順は、モニターに表示されるため、操作に慣れるのは早そうです。
安全性も高く、足や手を挟まないようにセンサーが設けられているなど、熟練者でなくとも安全かつ確実に加工できる工夫が至る所に見受けられました。
レーザ溶接機の説明・デモンストレーション
レーザ溶接機はロボットタイプとハンディタイプがありました。自動のレーザ溶接ロボットに関しては、動作を事前にプログラミングしておくと溶接する箇所にレーザ光が照射され、自動で製品ができあがります。
板金加工を担う人手は不足しているため、このように熟練者以外でも操作簡単なスキルレスの機械の開発に力を入れているそうです。
アマダのIoT(Internet of Things)の取り組みについて
同社はものづくりのDX化にも力を入れています。
「V-factory」と呼ばれる同社のIoTへの取り組みは2018年から本格的にスタートし、例えば以下のようなことが可能だそうです。
・予防保全 (IoTに接続して機械の不具合の予兆を捉える)
・リモートデジタル点検 (画一的な点検ではなく、同じ機械であってもお客さまごとに点検内容を変更して効果的な点検を行う)
・リアルタイム診断 (機械の不具合の際、リアルタイムで動作状況やデータを解析し、遠隔操作での診断も可能)
また、同じ機械を使っている企業間で、効率を比較できる"ランキング機能"という少し変わった機能も搭載されているそうです。ご説明いただいた方からは、「競争意識が芽生え、自然と改善意欲が湧くんですよ」と、この機能の評判は上々であることを教えていただきました。
見学終了後・・・
アマダのIR担当の方より、ファンドマネージャー一行に対して、IRの改善方法についてのヒアリングが行われ、部奈FMから投資家目線で決算報告会等にて発信してほしい内容の提案をするなど、企業と投資家のコミュニケーションを垣間見ることができました。
このようなコミュニケーションが行われることで、双方の目線を合わせることができ、その企業の価値が資本市場で正当に評価されることに役立っていくのだろうと感じました。
ファンドマネージャーはこう見た!!
機械単品を製造して何に役立てるかという視点にとどまることなく、お客様が何か作りたい時にアマダに相談すれば開発・改良からアフターフォローまで行ってくれる。アマダは単なる機械メーカーではなく、顧客の『ものづくり』そのものをサポートする、そんな存在だと改めて実感しましたね。
また、今回見学させていただいた機械全般に言えることですが、「誰でも簡単に安全に操作ができる」ための様々な工夫は、昨今日本の課題とされる人手不足に対する一つの解決策になりうるのではないかと期待しています。
IoTや今回見学させていただいたアマダ・グローバルイノベーションセンターなどから見える先進的な取り組みは、一方で顧客の側から見ると初期導入コストの高さにつながるようにも思われかねません。
顧客が生産を行う上でのトータルでのコストの低さをもっとアピールできれば、より積極的な導入につながるのではないかと思いました。
今回の見学で案内いただいた方々は女性も多く、多様性の観点からも人材育成に注力する同社がさらにグローバルにも展開 することを期待しています。(部奈)
今回はファンドマネージャーの取材に同行する形で、「株式会社アマダ」の取材の模様をお届けしました。取材をさせて頂いた株式会社アマダの皆さまにおかれましては、この場を借りて感謝申し上げます。それでは今回の「ファンドマネージャーが行く!」は以上とさせていただきます。次回のシリーズもぜひご期待下さい。