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実効性のあるエンゲージメントとは?~AIにはまだ負けない!~

提供元:三井住友DSアセットマネジメント(責任投資推進室 ESGアナリスト 小出 修)

近年、ESG投資の普及に伴い、ESGスコアの重要性が高まっています。ESGスコアとは、企業によるESG活動の取り組み度を示す指標です。数値化しづらいESGに関する情報を可視化したESGスコアがあることで、投資家は効率的に投資先企業のESGの取り組みを比較検討することが可能になります。このレポートでは、当社独自のESGスコアと、スコアを活用したエンゲージメントについてご紹介します。

国内上場全銘柄にESGスコア付与を開始

当社はプロダクトごとの運用ニーズに即したESGスコア体系を整備しています。国内企業に関しては、従来から継続的なリサーチ対象である大企業を中心に詳細なESGスコア(Comprehensive)を付与していました。これに加えて、評価のエッセンスを絞り込み、中小型企業を含む広範な企業を対象としたESGスコア(Core)の付与を進めています。当社独自のESGスコアは、①基礎評価(公開情報をベースとした体制面・情報開示に係る評価)、②アナリスト評価(対話等を踏まえた独自調査に基づく定性評価)で構成されており、2023年8月にはESGスコア(Core)の①基礎評価項目について、国内上場全銘柄に対しての付与を開始しました。

ESG評価の説明は図表1および図表2に記載していますが、基礎評価はあくまでも公開情報に基づく外形的な定量判断となります。
 
外形的な判断とは言え、上場全銘柄に対してのスコア付与は、中小型企業とのエンゲージメントにおいて、幅広く投資先企業を比較検討する上で実効性のあるツールとして利用できることになり、強力な武器を手に入れたものと自負しています。

実効性の確認

私がこのツールの実効性を実感できたのは、昨年の10月、あるサービスセクターに属する企業に対してのエンゲージメント活動においてのことです。
 
企業の経営トップの方に当社のESGスコア(Core)の基礎評価点がセクター内約300社中の中位であり、スコアが低い要因の一つにコンプライアンス委員会が未設置であることを伝えたところ、同年12月のコーポレートガバナンス報告書でコンプライアンス委員会の設置が確認できました。私が直接経営トップと対話をしてから実に2カ月という速さで対応して頂けたということになります。その後の対話においても、他にもできることは積極的に取り組んでいきたいというコメントを頂いています。広範な企業を横比較した客観的なスコアを示すことで、企業側との課題認識がしやすくなりました。

エンゲージメントのポイント

先ほどの事例を基に、私の考える実効性のあるエンゲージメントのポイントは以下の3点です。
 
①定量データや好事例を用いた対話
先ほどの当社のESGスコアのセクター内の順位の提示例もそうですが、やはり具体的な同業他社との比較は実効性の効果が高いと考えられます。また、同業他社の人的資本の開示や資本コストの開示などの好事例提示などは興味を持って話を聞いてもらえ、対話に弾みがつきます。
 
逆に、いくら好事例でも、業界が異なるとなかなか相手の心に響かないのも事実としてあります。以前、大手通信会社のEPSコミットメント経営の好事例を他の業界の企業のトップに伝えましたが、全く経営者の心には刺さりませんでした。
 
②キーパーソンとの対話
例えば、キャピタル・アロケーションや資本コストについての対話であればCFO、人的資本についての対話であればCHRO、デジタルの話をするのであればCDOがキーパーソンであり、実効性のある対話が期待できるということになるのでしょうが、理想的な組み合わせとしては経営トップとCxO同席での対話ということになるのでしょう。
 
必ずしも経営トップとの対話にこだわる必要はないかもしれませんが、言うまでもなくトップとの対話は実効性やそのスピードを求めるには極めて重要な要素となります。とは言え、多忙なトップの時間をもらうわけですので、私は3A(Anytime, anywhere, anyplace)の精神で粘り強く対話の機会を待つように心掛けており、実際、機関投資家との1on1ではなかなか会って頂けない企業のトップの方と先方本社へ出張することでの対話が実現したケースも多々あります。
 
③熱意を持った対話
企業の投資家および株主担当者(IR・SR)との日頃からの企業価値向上の為の建設的な対話が行われており、信頼関係が構築できているかどうかは極めて重要な要素です。
 
ESG課題に対する形式的な対話ではなく、熱意のある対話を続けていれば、当然厳しい意見を言うことになりますが、そこは必ず理解してもらえます。
 
また、企業の担当者との信頼関係が構築できていなければ、当然②のキーパーソンへのアクセスも困難なものとなります。

まだまだAIには負けない!

最後にChatGPTに『企業とのエンゲージメントに必要なもの』を問い合わせてみると、以下のような答えが返ってきました(図表3)。その中に、私が重要であると思う3項目は一つも含まれていませんでした。
 
エンゲージメントに関しては、この点からもまだAIにとって代られる仕事ではないと希望的観測をもって、今後もエンゲージメント活動に取り組んでいきたいと思います。

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