「誰もが見やすいレポートを」お客さまと運用会社を繋ぐ投信レポート作成のプロが心がけていること
資産運用会社にいるのはファンドマネージャーだけじゃない!
投資信託の情報をチェックするうえでは欠かせない月次レポート。今回はその月次レポートの作成を担当している社員にインタビューしました!
もしかしたら、この記事を読んでいる皆さんにはあまりピンとこない業務かもしれませんが、お客さまはもちろん、私含め運用会社の社員にとっても欠かせない、まさに縁の下の力持ちのような業務です。
毎月200~300本の月次レポート作成を担当!?
――普段の業務について教えてください。
主に投資信託の月次レポートの作成に携わっています。
――何本くらいの月次レポート作成を担当しているんですか?
私が所属している部署で作成している投資信託のレポートは毎月500本程度です。1つのレポートに対して作成者と確認者の二人体制で作成しています。
加えてDC(確定拠出年金)の月次レポート80本も担当しているので、作成・確認合わせて私は毎月200~300本程度の月次レポート作成に携わっています。
――月次レポートは月初に発行されることが多いと思いますが、その期間はかなりお忙しいですか?
そうですね、月次レポートはファンドごとに作成の締め切りが決まっています。特に、7、10営業日は全レポートの約8割の締切日なので、この日辺りまでは朝から夜までひたすらレポート作成業務です。
多い日だと1日に70~80本くらい作成(確認)しますね。
だいたい朝は8時前に業務を開始します。システムを動かして出来上がったレポートに対して、前月分と比較したり、目論見書と差分がないかどうか、ファンドマネージャーのコメントの中身が合っているかどうかチェックします。
月初の月次レポート作成がひと段落したら、月の後半は新規ファンドのレポート準備や会社合併前の旧会社同士の投信計理ツール(基準価額算出などを行う)などの統合に向けた準備に時間を割いています。
どんなに忙しい時でも、違和感はその場ですぐ確認する
――1日に80本くらいレポート作成されるとのことですが、ミスしないために意識していることはありますか?
私の場合は、性格が悪いかもしれないですけれど、全て疑ってかかっています。(笑)
自分が確認担当の時にミスを見つけることが多いんですが、「ここしっかり見たんで大丈夫です」って作成担当者が言ったとしても、私は信用せず(笑)全て疑ってチェックします。
ミスが出ると余計な仕事が出てきてしまいますからね。
これまでの経験も生かして、目を通している間に違和感がある箇所は、「あとで確認しよう」ではなく、気になった時にすぐ確認する。これはどんなに忙しい時でも常に心掛けていることです。
システム開発やレポートのHTML化まで幅広い業務に携わる
――当社へ中途入社されてからずっとこの業務に携わっていらっしゃるのですか?
メインの仕事はもちろん月次レポートを作る仕事ですが、実は、この会社に転職してきて一番初めに携わったメインの業務は、月次レポートを自動で生成するためのシステムとそれに付随するデータベースの新規開発というプロジェクトでした。
その後も、ユニバーサルデザイン等、資料のわかりやすさがホットな話題となっていた時期だったので、インフォグラフィック(情報やデータを視覚的に表現したもの)を用いたHPコンテンツの作成にも携わりました。
これまで部署異動はなかったですが、かなり手広く業務をやらせてもらっています。
ミドルバック業務※って、転職してくる前は結構地味なイメージがあったのですが、この会社のミドルバックはかなりアグレッシブだと思います。
※ミドルバック業務…交付目論見書やレポートなどのファンド資料作成・基準価額の算出などを行う業務
――システム開発は関係部署と連携して進めていく感じですか?
そうですね。もちろん実際の開発はIT担当の部署に手を動かしてもらうのですが、使い手は私たちなので、より使いやすくなるように、構成やデザインも含めて考えます。
新しく開発したデータベースを用いて、社内の他部署の方々にも簡単にデータを取得してもらえるような参照ツールも作成しました。
――私たちもよくそのツールを使わせていただいております!1クリックで投資信託のデータが取り出せるのでとても便利です。
誰でも容易にデータハンドリングがしやすいシステムを目指していました。他の取り組みとしては、月次レポートのHTML化ですね。
――え、もしやそれって「アクティブ元年・日本株ファンド」の月次レポートですよね!(※インタビュアーの平野が販売推進に関わっている商品なのでテンションが上がっています。)
そうですそうです。
※当社初の取り組みである「アクティブ元年・日本株ファンド」のHTML版月次レポートはコチラ
――HTML化の実現までにどれくらいの期間がかかりましたか?
2019年2月に実現に向けて検証を始めました。
その時にちょうど当社の直販専用で「アクティブ元年・日本株ファンド」が設定され、ネットで販売している商品なので、デジタル化を進めたいという話が入ってきたんです。
そこで、当社のHTML化レポート第1号としてやってみようということでプロジェクトがスタートしました。実際に完成して公開したのは、2019年10月分のレポートからなので、半年弱くらいの取り組みでした。
他の月次レポートは、私が入社したときに作ったシステムでExcel・PDFを自動で生成する仕組みになっています。
こうして出てくるExcel・PDFをどうやってHTML化するのかということを考え、業者を選定し、Web上で見やすいデザインを検討したりしました。
今は業界的にHTML化ってすごくホットな話題じゃないですか。当社はHTML化がまだホットじゃないときから目をつけていたので、おそらく業界の中でもかなり早い段階で取り組めたと思っています。
もともとPDFだった月次レポートをHTML化することのメリットは?
・スマートフォンからでも見やすくなる
・見たい情報にスキップできる
最先端の技術にも携われるアグレッシブなミドルバック部門にしたい
――今後の目標を教えてください!
運用会社の仕事といえばファンドマネージャーや営業は想像しやすいと思いますが、ミドルバック業務ってあまりイメージわかないし、難しい・地味って思われると思うんです。
先ほどお話ししたHTML化もそうですけど、そういう最先端にも携わっていけるアグレッシブなミドルバック部門になれたらいいなと思っています。
また、当社は資料のユニバーサルデザインに配慮した資料作りを心掛けていて、「わかりやすさ」がかなり重視されていると思います。
投資信託って現状は若手世代よりは年配の方、あとは投資初心者がメイン顧客だと思います。
そんな様々な方が一番目にする機会があるのが月次レポートだと思っています。なので、だれが見ても情報にアクセスしやすい資料作成を心がけていきたいです。
――由良さん、ありがとうございました!
由良 翠
2012年に新卒で資産運用会社へ入社。商品・外部委託運用との兼務を経て、当社へ中途入社。現在はクライアントレポーティング部にて投資信託の月次レポートの作成を担当している。