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桜の開花日を予想してみよう
提供元:三井住友DSアセットマネジメント(責任投資推進室 泉山 直哉)
2024年4月に行われた「令和6年度全国学力・学習状況調査」の小学校・算数において、次のような問題が出題されました。
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こんな簡単な方法で開花日が求められるのかと疑問に思った方もいるかもしれませんが、気象の世界では「600℃の法則」とも呼ばれ、よく当てはまる経験則として知られています。今回は、桜の開花目安がわかる法則についてご紹介します。
ソメイヨシノの起源
皆さんが桜と聞いて、一番すぐに思いつくのは「ソメイヨシノ」ではないでしょうか。 ソメイヨシノは江戸末期に江戸染井村(現在の東京都豊島区駒込付近)の植木屋によって広められた園芸種で、エドヒガンとオオシマザクラの交雑種と考えられています。
この品種は、エドヒガンの「葉が出る前に花が咲く」という性質と、オオシマザクラの「白く大ぶりの花を咲かせる」という性質の良いとこ取りをしています。
しかし、ソメイヨシノは自分に近い遺伝子をもつ仲間の花粉によっては受精しないという「自家不和合性」があり種子で増やすことができないため、ソメイヨシノの枝を別の台木に挿して固定する「接ぎ木」と呼ばれる方法で増やされてきました。
この「接ぎ木」で成長した木は全く同じ遺伝子をもつことになるため、ソメイヨシノはすべてが同じ遺伝子をもつクローンなのです。
開花・満開の定義
ソメイヨシノは九州から東北まで幅広く分布しており、すべてが同じ遺伝子を持つため、同じ条件が揃えば開花時期がほぼ同じになると考えられます。この特性から、気象庁では1953年から生物季節観測の観測項目としてソメイヨシノの記録を続けています。
各都道府県の地方気象台やその近くにある計58本の標本木で、5~6輪以上の花が開いた状態となった最初の日を「開花日」、約80%以上のつぼみが開いた状態を「満開日」として観測を続けています。
ちなみに、ソメイヨシノが生育できない地域では、エゾヤマザクラ(北海道)とヒガンザクラ(沖縄~奄美諸島)を観測対象としています。
ソメイヨシノを襲う病気:サクラ類てんぐ巣病
ソメイヨシノは同じ遺伝子を持つクローンであることが仇となり、病気に弱く寿命が短いとされています。特に、カビの一種であるタフリナ菌が原因で起こる伝染病「サクラ類てんぐ巣病」による被害が拡大し、花が咲かなくなるだけでなく強風時に倒木する被害も出ています。
ソメイヨシノを各地の桜の名所に提供していた日本花の会では、2009年からソメイヨシノの提供を取りやめ、代わりに病気に強く花びらの形や開花時期が近い「ジンダイアケボノ」を推奨しています。
600℃の法則は成り立っているのか?
冒頭でもご紹介した通り、600℃の法則では、日々の最高気温を2月1日から積算していき、その結果が600℃を超えた日を開花予想日とする手法です。この600℃の法則が成り立っているのか、早速気象庁の生物季節観測データを用いて検証してみます。
今回は、東京を例に見てみましょう。10日以上外れている年もありますが、72年中53年(73.6%)は600℃を超えた日の前後3日以内には開花しており、単純に計算できるわりには比較的よく当てはまっていることがわかります。
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開花日を予測する他の方法:400℃の法則
ソメイヨシノの開花日を計算するもう一つの方法として、「400℃の法則」もあります。400℃の法則では、日々の平均気温を2月1日から積算していき、その結果が400℃を超えた日を開花予想日とする手法です。600℃の法則と同様に、1953年以降の東京のデータで見てみましょう。
こちらでも、72年中56年(77.8%)は400℃を超えた日の前後3日以内には開花しており、また前後10日以上外した例はありません。
これにより、600℃の法則と同様に比較的よく当てはまっている経験則であることがわかります。
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まとめ
今回のサステナビリティニュースレターでは、桜の開花日を予想する簡単な方法をご紹介しました。桜の開花は多くの人々にとって春の訪れを感じる重要なイベントです。
みんなで一緒に桜の開花を待ち望む時間は、春の楽しみの一つです。ぜひこの機会に、桜の開花予測を試してみてください。
<参考資料>
●国立教育政策研究所
「令和6年度全国学力・学習状況調査」の調査問題、小学校算数の調査問題
● 気象庁
生物季節観測の情報 さくらの開花日に関する情報
過去の気象データに関する情報